2009年09月14日

食のある景色:カンボジアでのスケッチ(2009年3月号)

絵を描くのは苦手である。子供のころから、満足に描けた試しがない。手先が不器用、かつ絵心がないとは、自分のことだと思っている。そんな私を、ホントに情けないと思うことがある。

旅にでて、知らない街で巡り会う景色が、心に触れると、これを残しておきたいと思うものである。この風景を瞼の裏に焼き付けて、忘れないようにしたいと願うこともある。そして、その景色が語るストリーのインパクトを、誰かに伝えたいと思うことだってある。

そんな時、絵が描ければと思う。

しかし、絵の描けない私は、かわりに、文章でその景色を残そうと思うのである。一度の旅行で、いろいろな風景や物語に出合った時は、特にそう思う。スケッチのように、文章を書きたいと思うのである。この2月のカンボジア行も、そんな私のスケッチ願望を、駆り立てる旅であった。

食いしん坊の私が残したいと思う景色は、食にまつわる場合が多い。美味そうな食べ物や、レストランの内外装。そして、そんな私のスケッチ願望を、後押ししてくれるのは、デジカメである。デジカメで撮った写真をながめて、うるおぼえのディテールを補強、修正しながら、スケッチのように軽々と、文章を書きたいと思うのである。

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posted by e-dream-s at 22:57| Comment(0) | e-dream-s come true(井川 好二)

2009年09月11日

Powerをこの手に:道具としてのPC考(2009年2月号)

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「菱足鋏」筑前福岡<注1>)


コンピュータは身近な道具の一つ。毎日付き合っている。雨の日も風の日も、1日6時間以上、液晶画面を見つめ、キーボードに指を走らせながら暮らしている。機種は変わってもパソコンとは、これからも、ずっと長く付き合っていくことになるのだろう。

ワープロ・ソフトで教材や試験を作ったり、表計算ソフトを使って採点結果を集計したり、プレゼンテーション・ソフトで講義や学会での発表用資料を準備したり。コンピュータ抜きの人生は考えられない。今も眠い眼をこすりこすり、パソコンの液晶画面を見つめて、この原稿を書いている。

「センセ、今日のお鞄・・・」
「ごめん、えらい重たいやろ」
「お箸より重たいもん、お持ちにならへんセンセが・・・」
「パソコンや。肩こってしゃあない」
「お仕事どすか?」
「いや、修理してもろてたんを、取りにいってん。落とさんように、ちゃんと預かっといてや」
「へえ、センセの大事なお道具、しっかり番させてもらいます」

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2009年09月07日

残り福に考える日本の文化(2009年1月)

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銹絵染付梅波文蓋物におせち<注1>


「まだ松の内どすよって」と女将が運んで来たのは、乾山風<注2>の鉢に盛られたおせち。行きつけの割烹、えべっさん<注3> 残り福<注4>の夜である。

「Oh、JAPANの正月」
「吹田の慈姑<注5>、丹波の黒豆、琵琶湖の諸子<注6>の昆布巻き、どす」
「こういうのが、美味そうに思えるんは、歳いった証拠」
「へえ、だいぶ大人になりはった」

「あれ、チョロギ<注7>がないなあ」
「センセ、チョロギお好きでしたん?すんません、ちょっと切らしてしもて」
「かめへん、かめへん。黒豆に付きもんやから、なかったら、ちょっと寂しいだけ」
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2009年09月06日

アジア・ツアー:名古屋スケッチ(2009年6月号)

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名古屋とその周辺<注1>


新大阪から新幹線で東京へ行く時はいつも、京都を過ぎて、たぶん岐阜羽島<注2>あたりで眠ってしまい、気がついたら新横浜。その間の記憶がない。「のぞみ」の停まる駅がないか、停まらない駅が多い静岡県はともかく、東京・大阪間の要、名古屋は、東海道新幹線のどれに乗っても必ず停車しているはずなのだが、その駅の記憶がないのは、こっちの気の持ち様か。あるいは、2時間半の列車旅では、最初の1時間で、眠りに落ちるのが、疲れた現代人の習い性?
とにかく、列車で何回も通過しているはずなのに、名古屋には、馴染みがない。名古屋出身の知り合いもいないのである。
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2009年08月22日

大学のお仕事(2009年7月号)

私鉄の駅舎を出て歩きだすと、ザアッと降り出すいきなりの雨。夕方のアスファルト道をビシャビシャ叩く。昼間の熱気や砂埃を、一気に洗い流す勢いは良いのだが、傘を持たない横着者は、このスコール<注1>もどきにやや閉口。まあ、しかたないかと、鞄を頭に、ヒョイヒョイと水たまりを避けつつ、もう近い馴染みの割烹へ急ぐ。

海老茶の暖簾を潜って、引き戸を開ければ、着物姿の女将が、続きを読む
posted by e-dream-s at 22:54| Comment(1) | e-dream-s come true(井川 好二)